カルト映画ほどよく語る

元ネタタイトル:悪い奴ほどよく眠る
題材:地獄の黙示録

地獄の黙示録を見たんだ

見たきっかけとしては地獄の黙示録監督のフランシス・フォード・コッポラがあまりにも有名で人気のある監督にも関わらず作品を見たことがなかったからである。
ゴッドファーザーシリーズとかも随時見ていくつもりではいるんだ。

内容についてはベトナム戦争を描いた作品で、世界的にも映画好きの中でも好きな人が大勢いる大人気作品
ワーグナーのワルキューレの騎行の使い方が凄くてそのシーンだけでも見たことある人は多いはず

見た直後にTwitterにあげた感想が以下

名作扱いされているけれども見ていて正直この作品の魅力だったりは一体何かわからずに悶々としていたので、色々と整理しながらブログにまとめていきたい。

何が面白いのか

面白い作品だと思っていないので批判的な立ち位置で見ることになるが、
色々と背景だったりを調べつつ自分なりにまとめていく。

題材のベトナム戦争について思うこと

地獄の黙示録はベトナム戦争を描いているが、ベトナム戦争自体がアメリカ的には黒歴史的なものであり臭いものには蓋ではないが目を背けたい出来事である。
このベトナム戦争が、猟奇的で凄惨で混沌としている戦争であることを映像として映し出している。
特に印象的なのはやはりキルゴア中佐のシーンだろうか。

ワルキューレの騎行を流しながら編隊(ヘリコプターが9台しか用意できずに大隊として見せるのに苦労したらしい)を飛ばし、焼夷弾を森林にぶっ放すシーンの映像は大変素晴らしく、ここだけをとりあえず見ておけば良いと個人的に思う。
その際のセリフ『朝のナパーム弾の匂いは格別だ』は名言

アメリカは、太平洋戦争時でも栄華を極め絢爛豪華な世界だった。
その後も世界の中心として君臨し続けていたアメリカであったが、
ベトナム戦争を皮切りに暗黒の時代へと陥る。

人間は弱くなった時に、辛い現実を直視するようなことはできず、それはフィクションにおいても現れていると(私個人として)考える。
精神的に脆くなっている状況下において、娯楽であるはずの作品でまで暗い気持ちになりたくない、そういった精神状況下であればハッピーエンドが好まれるのは当然だろう。
現代の日本でなろう系作品が流行っている一端はそういったことではないかと

ベトナム戦争後の暗雲立ち込める状況下の中、地獄の黙示録という眼を背けたくなるような現実を真正面から映したことは素晴らしいのであろう。

混沌とした戦争

ベトナム戦争については、特に混沌とした戦争であり兵士たちにも大きな傷跡を残したことは有名である。
その辺りはタクシードライバーやランボーなどを見ていただきたい。

混沌(カオス)が地獄の黙示録としての一番の魅力になっているのではないかと考える。

どの映画も、戦争映画といっても物語は構成されている。
戦争の中でも物語が始まり、終わりに向かい決着がつく。
もちろん地獄の黙示録も戦地に向かい、目的を果たすという終わりが存在している。

地獄の黙示録は脚本が未完成のまま映画を撮り始めることになる。
それ故に、一見すると物語があるようでない。
主人公であるウィラード大尉が、ベトナムで独立国家を作ってしまった元アメリカ軍人のカーツ大佐を見つけ暗殺するというわかりやすい物語はもちろんあるのだ。
だが、映画を見ていると何を題材にして何をしているのかを見失う。
そこがカオスだ。

実際の戦争では、思った通りに事が運ぶことはないだろう。
状況は刻一刻と変化していく。
この映画も同様に、目的があったはずなのにその場その場で意識が逸れていくのである。

そういったカオスさがよりベトナム戦争という不条理で不合理な戦争をより一層際立たせるように映し出したのだろう。

映像美としての魅力

前述したワルキューレの騎行のシーンなどを中心に映像としての美しさは一級品だろう。

快楽原則

映画などの娯楽において快楽は必要な物だろう。
戦争映画としての銃撃戦などである。
確かに地獄の黙示録においても、前半のシーンでは快楽的なシーンは存在する。

では中盤以降はどうである。
よく地獄の黙示録の感想で見かけるのが中盤以降の退屈さである。
これは、中盤以降話の起伏が薄く何を見させられているのかわからない、鬱屈とした映像の連続である。
ある意味ではこの辺りがカーツ大佐の苦悩を描いている重要なものなのかもしれないが

やはり映画としてラストシーンの快楽があるとないとでは見終わった後の気の持ち方が別であろう。
椿三十郎の最後の立ち合い、夕陽のガンマンや明日に向かって撃ての最後の大立ち回りなどある程度のダレ場を経由して最後に快楽を発散させることによって、脳が満足する。

地獄の黙示録は逆で前半は快楽的であるものの、中盤以降からラストにかけての快楽が存在しない。
それ故に、見終わった後にこの映画は一体何をしたかったのだろうと考え込んでしまう。

だからこそ、この映画について反芻したくなってくるのかもしれない。

じゃあ何が不満なのさ

前項目で述べたように、映画として確かに面白いと言える部分が凄い多い。

だが、私個人としては混沌さという表現で誤魔化しはしたものの、
やはり物語としての希薄さや完成度といったことで言えば駄作になると思っている。

この映画は一回見て、名作だ素晴らしいなどといった感想を抱くような作品では決してないと思う。
一度見た結果として、この映画はなんだったんだろう、
と思い複雑な気持ちに追いやられる。
だからこそ色々と自分なりに考えこの映画と向き合う時間を取り、
何度も繰り返し見なければいけないのだ。

そういった意味で現時点ではあまり面白い作品ではない。
やはりカルト映画として位置付けられる作品であり、
この作品の混沌とした世界に魅入られていく人間が深みに嵌っていくのだろう。

私はまだその域には達することができず、どうにもこの映画が大人気作・名作みたいな取り扱われているのに疑問が生じる。

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